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◎ エンジン整備
エンジン整備の基本
エンジン整備の基本は、トラブルの未然防止(予防)です。
例えば海況がとても悪い状態や、絶対にエンジンの助けが必要なときにトラブルを起こしたら、大変苦しい状況に追い込まれます。
また、トラブルと言うものは、えてしてこのような時発生する割合が非常に高い。
そのような状態で修理に汗を流すよりも、平穏無事なとき整備をしておけば、そのエネルギーは1/10くらいで済みますし、トラブルの不安を抱えながらの航海は多大なストレスをもたらします。
逆にきちんと整備してあるディーゼルエンジンは、とても安心感を与えてくれます。
自分で整備する場合、信頼できる専門家の意見を聞き、基本に忠実に施工すること。
毎年施工するべきもの
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オイル&オイルエレメント交換
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エンジンオイルはほとんど運転していない時でも空気で酸化するので、毎年交換する。
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交換前に15-20分くらいエンジンを運転してやると、粘度が下がり、冬でも抜きやすい。
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オイルゲージのアッパーレベル80%を目安に補充する。入れすぎは逆に良くない。
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オイルエレメントを交換したら、エレメント交換後にオイル量を確認する。
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できればマニュアルでそのエンジンの総量を把握して、その分量分だけ補充すると良い。
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燃料フィルター交換
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燃料フィルターは古い船になればなるほど、毎年必ず交換する。
古い船は、燃料タンクにスラッジや水分など不純物が蓄積している可能性が非常に高い。
少し揺れたりすると、燃料タンクから不純物が燃料に混じって上がってくる。
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エンジンと燃料タンクの間に、油水分離機やフィルターがある場合、こちらも掃除やエレメントの交換をすること。
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交換した後は、きちんとエアー抜きをする。不完全だと不調の原因になる。
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バッテリー液補充
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蒸留水やバッテリー液をバッテリーのアッパーレベルまで補充する。
最低限2年毎施工するもの(もちろん毎年ごとなら、なおOK)
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海水ポンプインペラー交換
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防蝕亜鉛交換
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Vベルト交換
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間接冷却の場合、冷却水クーラント
4−5年で交換するもの
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ミキシングエルボー
シリンダーの排気出口にエンジンの排気と冷却水が合流する部品があり、この部品をアッセンブリーで交換する。
この部品はパイプの内部を排気が通り、その外側を冷却水(海水)が流れるようになった部品。
たいていは鋳物+溶接で作られており海水の影響で電蝕を起こし、パイプが外れてしまう事故が多い。
もしそうなった場合エンジン燃焼室内に海水が入り、エンジンに致命的な打撃を与える。
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冷却水サーモスタット
この部品は、外気温が低いとき、冷却水の流れを調整し、エンジン内部を早く温めるような調整弁のような役割をする。
10−15年くらい
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シリンダーヘッドをはずし、バルブのすり合わせをする。
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燃焼室内の給排気のバルブは経年変化で傷が大きくなり、燃焼室内の圧縮が減り、完全燃焼を起こさなくなり、発生馬力も減少をする。
バルブのすりあわせにより、かなり修正できる。
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もうひとつ重要なこと。
シリンダーとヘッドの間にはガスケットパッキンが入っており、このパッキンの一部には海水の通り道があり、ガスケットが古くなり消耗し、ガスケットにひび割れが入り、燃焼室に海水が流入するケースも多々ある。
気がつくのが遅かった場合は、エンジンに致命的なダメージを与える。
これを未然に防ぐ為に、点検を兼ね、古いエンジンは一度ヘッドを開放した方が良い。
オーバーヒートの対処方法
チェックする場所
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冷却水取入れ口
ビニールやプラスティックごみなどを吸い込むケース。
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海水フィルター
ゴミが詰まっていないかどうか点検
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海水ポンプインペラー
2年に一度インペラーを交換している場合は一番最後でも良い。
あまり交換していない場合、インペラーの羽が折れたり欠けているケースが多い。
もちろん1枚欠けても海水は上がってこない。
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ヤンマーエンジンの場合、シリンダーからヘッドに抜ける小さなエルボー(90度に曲がっている)パイプの中。
古くなるとここに塩の結晶が詰まるケースが多発する。
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サーモスタットの不良。
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ミキシングエルボーに冷却水が入る入り口。
ここにも塩の結晶や、ゴミが詰まるケースが多々ある。